白梅のあと紅梅の深空あり
龍太
龍太
まだ寒気の残る早春、他の花にさきがけて咲く白い梅の花は
その気品と香りから古来高雅を愛する文化墨客に和歌や絵画の対象とされて参りました。
そのような白梅がひとしきり咲き誇ったあと少し遅れて紅梅の花の盛りがやって参ります。
この頃になりますと陽光も強まり、海は眩しく輝き始めます。
この句はそんな季節の移ろいの中で艶やかさを見せる紅梅の「紅」とそれに呼応(こおう)するかのように深みを増してゆく空の「紺」とを「深空(みそら)」という造語を使って美しく表現してみせたものです。
作者の飯田龍太は「伊豆あたりでは白梅より紅梅が先に咲くそうだが、甲州では逆である。かれこれ一週間ほど遅れるだろう。」と言っております。
(中杉 隆世)